周囲に相談できずに、ひとりで苦しんだ経験って、誰しもあるんじゃないかな。
人に言いづらい悩みだったり、共感できる人が周りにいなかったり。
そういう時、ネットの中に記録を残している「同じ気持ちを経験した人」に、かなり支えられてきました。どこの誰かも、わからない恩人たち。
だから、わたしも書き残しておこうと思います。
同じ状況の人にも、そうでない人にも、読んでもらえたら嬉しいな。
胞状奇胎という病気
3月の上旬、わたしは医師から、こう告げられました。
「胞状奇胎の疑いがあるね。放っておくとガンになってしまう可能性もある、やっかいなものなんだよ」
早口でさらさらと話す医師の言葉を、わたしは理解できず。
自分の口から出てきたのは「ホウジョウ、キタイ?」という、間抜けな声でした。
「そう、まだハッキリとは言えないけどね。とりあえず来週、また来てください」
どういう病気なのかよくわからないまま診察室から出て、すぐにスマホで検索する。
胞状奇胎とは、子宮内の胎盤組織が異常に増殖する病気で、柔毛ガンへと移行する可能性もあるらしい。
胞状奇胎の発症率は、妊婦500人のうち1人、つまり0.2%の確率。
発症するのは、妊婦だけ。
そう、わたしはこの時、妊娠していたんです。
一度も喜べなかった妊娠
「経過があまりよくないね」
「この時期にはもう見えるはずのものが、見えないな…」
お腹に命が宿った兆しがあったものの、産婦人科に行くたびにこんな言葉が返ってくるもんだから、わたしは一度もハッキリとは喜べませんでした。
それでもどうにか気持ちを立て直し、家族や友達に励ましてもらい、うまくいくことを信じようとはしていたのだけど。
初めての経験だし、それだけでもいっぱいいっぱいだったところに、
「胞状奇胎の疑いがあります」
「ガンになる可能性もあるもの」
こんなに怖い言葉を、これほどたくさん浴びることってあるんだな、と。
胞状奇胎であれば、異常妊娠なのでもちろん妊娠の継続はできないし、
そもそも大切に想っているお腹の中の命が、ガンのもとになるものかもしれないなんて、そんなこと信じたくなかった。
そして経過観察を続けていた、ある日。
ついに医師から「妊娠の継続は厳しいでしょう」と言われ、その言葉通り、翌日にはお腹の中の命が血とともに出てきて、急いで病院へ行き、わたしはそのまま手術を受けました。
二度の手術
一般的な流産であれば、手術は一度で終わり。
しかし「胞状奇胎の疑い」があったため、万が一胞状奇胎が残ってしまうと危険とのことで、念には念を入れてを除去する必要があり、一週間後に二度目の手術をしました。
一度目は、急だったこともあって記憶も曖昧。
覚えているのは、全身麻酔が効きすぎて5時間以上目覚めなかったことと、目覚めたあとの気持ち悪さだけ。
二度目は、事前にわかっていたからこそ、入院してから手術までの時間ずっとソワソワして、手に汗を握っていました。
でも、始まってみると前回よりも心なしか余裕があって、全身麻酔なのに意識もあり、手術中BGMとして流れていたドリカムの歌とか、先生や看護師さんの声も聞こえていて。
とはいえ、目も開けられないし、身体も動かないから「なんだか自分が死んだあとの世界みたいだな」と思ったり。
二度目ともなると、もともと失うものはないし、術後のダルさがあるだけで悲しさもなかったです。(でも、もう二度とやりたくないけど)
手術が終わったあとは、病理検査の結果が「胞状奇胎でないこと」を祈るばかり。
検査の結果
二度目の手術から数日後、病理検査の結果が出ました。
「胞状奇胎ではなかったようです」
医師に「良かったね」と言われて、ホッとしたのと同時に
「もっと早くわかれば手術1回で良かったのにな」
「病気じゃないなら、ただ単に流産したんだな、わたし」
という気持ちにもなりました。それで落ち込んだわけじゃなくて、ただの事実として、そう思っただけ。
こうして、3月のはじめに発覚したわたしの妊娠は、気持ちが休まることがないままに終わってしまい、その後「胞状奇胎じゃなかったこと」にホッとする形で、ようやくひと段落したのでした。
この1カ月考えたこと
この1カ月、自分が知らなかった世界を、いっきにたくさん覗いた気がします。
例え妊娠したとしても、流産する確率が平均10-15%もあること。
そして待望の命が、胞状奇胎として自分の身体を蝕むものになる可能性があること。
当事者になるまで知らなかったなぁ。
「生まれてくるだけで十分すごい」なんて当たり前なことに、今さら気づきました。
でも、もっと驚いたのは、流産や胞状奇胎疑いを経験したわたしに対して「実は、わたしも経験があるよ」と打ち明けてくれた人がいたこと。
それも、1人ではなく、何人も。
近しい人ばかりだったのに、知らなかったなぁ。
今回のような「ハッピーとは言えない出来事」は、周囲に言うこともなく、ひっそりと、静かに経験している人も、たくさんいるのかもしれない。
わたしが、何も知らないだけで。
例にもれず、わたしも一部の人にしか今回のことを伝えてなかったのだけど…
やっぱり自分一人では抱えきれなくて、何度もネットで検索をして、同じことを経験した人のブログを読み、励まされてきました。
周りの人には言いづらいけど、本当は誰かに気持ちをわかってほしい。
共有したい、ひとりぼっちじゃないって、思いたい。
そんな気持ちを抱えているうちに、ふと「自分がブログを書き始めたのは、そういう理由だったな」と思い出しました。
自分が周りに言えなくて苦しんだことを書き残せば、誰かの役に立つかもしれない。そう思って、このブログを始めたのでした。
だから、今回の経験も、書くことにしたんです。
自分が誰かのブログに支えられたように、このブログが少しでも誰かの気持ちを軽くすることを、願って。
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ちなみに、わたしはもう元気ですので、ご心配なく。退院翌日から、仕事もバリバリしています。
気持ち的にも前を向けたからこそ、この記事を書いております。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました!